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新英語教育研究会神奈川支部HP

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2006 大津 由紀雄さん:小学校英語反対!

講演「小学校英語に翻弄されないために考えよう」
                     大津 由紀雄さん(慶應義塾大学教授)
 「必修化」というマスコミ報道に踊らされることなく、現状を知る。まさにタイムリーな講演。参加者は熱心に聞き入っていました。大津先生、ありがとうございました。

(1)大津先生
・ 『学校英語を考える』岩波ブックレット
・ 『小学校での英語教育は必要か?』慶応大学出版会
・ 『小学校での英語教育は必要ない!』同上 (?と!で連作です…)

(2)今日の論点
・ 本質抜きの議論がくり返されてきたこと
・ 「報告」を読み解く
・ 推進の根拠がほぼすべて消えてしまったこと
・ 現状分析+現状にどう対処すべきか

(3)解説
・ 英語活動と英語教育=「教科化したいが、できないなら必修化しよう」という動き。報道されるのは「必修化へ」の「~へ」が取られている報道もある。小学5、6年で週一時間程度というイメージ。
・ 「小学校の英語活動+中高大の英語教育の充実」と「(小中高大の)英語教育全体の再編成」とは異なる点に注目。
・ 「報告」とは「中教審初頭中等教育分科会教育課程審議経過報告2006年02月13日付け」のこと。大津先生から一言「この審議経過報告、ネットで読めるので読んで下さいね」
・ 消えてしまった「推進の根拠」+反証
主張1「英語学習の早期開始は心理学の裏付けがある」
反証1:津本忠治(2005:49)「早期教育や訓練を始める最適の年齢を、脳科学の観点から決めることは時期尚早でしょう。
主張2「歌と踊りと日常会話、小学校英語三種の神器で子どもの目が輝く」
反証2:この3つにはcreativityがない。大人の目を輝かせるのは難しいが、子どもの目を輝かせるのは簡単。問題はその輝きを維持させられるかどうか。
●斉藤敦子『総合教育技術』2005.11月号「小学校で培った英語に対する意識が中学校での学習時に落ちてくる傾向がみられる」
主張3「発音だけでも!」
反証3:発音の独り歩きはできない。
(途中を略して…)主張6「アジアの隣国に負けてはならない」
反証6:小学校英語「先進国」での弊害
主張7「議論はもういい。やろう! もう94%でやってるんだ。いまさら引き返せない」
反証7:年に一回程度しているのが94%である。そんなにやっていない。
・ 「語学ビジネス徹底調査レポート2005年度版」矢野研究所によると
早期英語教育の市場910億円! (いい食い物になる可能性が…)
成人向け外国語教室市場2690億円
学習参考書140億円 電子辞書728億円
・ 大切なことは「当事者の小学校の先生方を中心に声をあげること」
=「そんなことにかけているエネルギーや時間はないという反対の声」
「英語なんて教えられないというような不安の声」
「考えるための情報が与えられていないなどの訴え」

(4)言語学
・ 横浜めぐり:駅名で「横浜」「新横浜」の次に「新横浜北」をつくったら、間違えて降車してしまう人が多く、「北新横浜」になった。

■参加者の感想
□ ありがとうございました。今後とも外国語教育に関わりながら、研修を進めていきたいと思います。本日は母校の中学のクラス会などがあり、失礼いたしますが、今度ゆっくりお話ができればと思っています。
□ 小学校英語が現場の議論なしに上意下達で入ってきている。現場から声をあげていく必要性を感じました。
□ (小学校英語導入に関する)概説的なことが学べて良かった。脳科学についての大津先生の見解が聞けて良かった。
□ 私が勤務する市は国際理解教育特区で、小学校の英語活動がさかんに行われています。市教委が共通の教材や評価規準表まで作ったそうです。私はこの4月に他市から異動してきたので、まだ内情をよく知らないのですが、小学校英語は他人事ではない問題です。実際、カリキュラムづくりなどは力を入れていても、市のALTの質は落ちていたり…、大変な矛盾を感じています。
□ 私の勤務校では「小中連携と国語力の育成」という大きな研究テーマを掲げています。英語科教員として、どのように小中連携にかかわれるのか考えているときにこの会を知り参加しました。近隣校では小学校へ中学校から年に数回「出前授業」をして、それで連携できた、とされていますが、とにかく、何でも安易な方向へ流れていく傾向が心配です。小学校英語には原則で賛成できない、と改めて強く思いました。
□ 研究分野の違う教授の見方に新たな発見をしました。ありがとうございました。
□ 経験上で単純に結論しにくいことなのですが、個人的に小学校英語の教科化は現状では賛成ではありません。
□ 大変刺激的で興味深い話でした。「太郎と花子の話」で英文に直したらどうなるだろうとずーっと考えていました。奥が深く、興味深かったです。やっぱり言語学、おもしろいです。「横浜めぐり」。
□ パソコンを使った表示はわかりやすいし、話をする人もやりやすいように思える。最後の「メタ言語~」の部分をもっと一般の人たちに広めた方がいい。
□ 小学校の英語教育に関わる諸問題を多面的に、時には専門的に話をしていただきまして、本当に分かりやすかったです。ありがとうございました。現状を把握していない私自身が恥ずかしくなりました。


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